オンデマンドの移植手術

2013年11月、中国政府傘下の『鳳凰週刊』で、過去10年間の中国への渡航移植の成長を特集しています。記事には臓器がオンデマンドで待ち時間なくすぐに適合されているかが報告されています。さらに、中国での移植件数は米国を超えたことも明記されています¹。

過去10年間、「移植ツーリズム」の流れとともに、信じがたいほど効率のよい移植手術の事例が数多く報道されてきました。一人の医師は年間246件の肝移植を行いました。ある患者は48時間以内に腎移植を二回受けました…国際社会の医療専門家たちは中国の大量の臓器源に疑いを抱いています。臓器移植そのものは、定期的な手術として難しいものではありません。適合する臓器を見つけることが難しいのです。国際社会では適合する肝臓や腎臓のために何年も待つ状況ですが、なぜ中国ではこれほど多くの回数で「奇跡的」に適合臓器を見つけられるのでしょうか？

国際社会の医療専門家たちは、中国の臓器移植市場の現象を分析し、中国には地下に巨大な人の臓器のバンク、もしくは生体の臓器バンクが存在するに違いないと見解しています。ここでドナーは血液検査され、事前に関連書類が作成されます。需要があった時、「オンデマンド」で、生きている臓器ドナーは病院（つまり屠殺所）に送り込まれます…

…中国本土での移植の特徴は、待ち時間がないこと、事実上、オンデマンドで適合する臓器が見つかることです…

レシピエントを求めるドナー

雲南昆明腎臓病医院は中国南西部でトップ100に数えられる市立病院です。腎臓と肝臓の移植を専門とします。約100病床を備え2、国外10ヶ国・地域の患者が訪れています³。

患者からの質問にオンラインで回答する際、同病院は「ドナー（臓器提供者）が適合するレシピエント（臓器移植者）を求める病院です」と説明しています。

• 同病院はドナー（臓器提供者）が適合するレシピエント（臓器移植者）を求める病院です。
• できる限り短期間で、一人一人の患者の方のために健康な腎臓を見つけることを保証します。
• できる限り短い、冷虚血・温虚血時間です。
• 付着しない場合、成功するまで手術を続けます。2度目以降の手術費用はいただきません。

待ち時間の短さ

高度なヘルスケア設備と十分に組織化された臓器提供制度が備わっている国々では、提供される臓器が入手できるまでの待ち時間は数ヶ月ないし数年です^{4 5}。しかし、中国では、臓器提供は文化的にタブーであり、効果的な臓器提供制度は存在していません。必要な時にいつでも患者と適合する臓器が見つかるということは、患者と適合する臓器源がかなりの数、存在することを示唆しています。

中国医科大学附属第一医院の臓器移植部門にあたる中国国際臓器移植支援センター（CITNAC）のウェブサイトには下記のように書かれていました。

「腎移植に関しては、1週間、最高で1ヶ月でHLA適合ドナーを見つけます…ドナーの臓器に異常が見られた場合、同センターには、患者のために別のドナーを見つけ、1週間以内に手術を始める責務があります⁶」

上海の長征医院の臓器移植科の肝移植申請用紙（2006年）には平均待ち時間1週間と記載されており⁷、別の書面では最短待ち時間が4時間と記載されています⁸。2003～2006年にかけて同医院では72時間以内の手術を要する緊急肝移植を120件行っています。中国国外ではこのような緊急移植手術のために臓器を見つけることはほぼ不可能です。

中国肝移植登録センター（CLTR）の2006年度報告によると、中国の29の移植施設で行われた8486件の肝移植のうち4331件が緊急もしくは待機手術に分類されました。このうち緊急移植手術は1150件（26.6%）にあたります⁹。緊急でない肝移植手術の待ち時間は通常、数週間と見積もられています。

何回も移植手術を受ける患者

中国本土では、医師が予備として複数の臓器を調達すること、拒絶反応を起こした患者に複数の移植を続けて行うことは珍しいことではありません¹⁰。3回目、4回目の移植手術に至る事例もあります。同じ患者のために8つの腎臓が調達された例もあります。

南京軍区福州総合医院の副院長である譚建明（タン・ジャンミン）医師は、2014年に4200件以上の腎移植を行ったと報告されています¹¹。2003年9月に上海総合病院で35歳の男性の患者に手術した際、2週間で4対の腎臓と血液サンプルを入手しましたが、どれも付着しませんでした。その後2004年3月に、さらに同じ患者のために4対の腎臓を次々と入手し、最後の腎臓が無事に付着しました。一人の患者のために8個の腎臓が外植されたのです¹²。

2006年、主任外科医の王光策（ワン・グアンツ）医師が、河南中医学院第一付属医院で行われた50の再腎臓移植の事例を分析した論文を発表しました。50例のうち、46例は同じ患者にとって2度目、3例は3度目、1例は4度目の手術でした。前回の手術との期間は2時間から8年と様々でした。5例は、正位（本来存在すべき位置に移植）再移植で、前回の移植手術の10日以内に行われていました。つまり、10日以内に腎臓が発見されたということです。少なくとも一つの事例では2時間以内に腎臓が見つけられています¹³。

映画スターの傅彪（フ・ビアオ）の肝移植を二回行った天津東方移植センターの沈中陽医師は、同センターの患者の2度目の移植手術は、不適切な取り扱いに起因するものが全体の10%から20%であると語っています¹⁴。

別の例では、復旦大学附属中山医院の朱同玉（ヂュ・トンユ）医師が、同一の患者のために4回目の移植を行っています¹⁵。

必要に応じて身体部分を入れ替え

調査した病院では以下のようなあらゆる移植を手がけていました。腎臓、肝臓、心臓、肺、脾臓、副腎、膵臓、肝/腎、膵/腎、心/肺、心/腎、小腸、肝/膵/十二指腸、膵/十二指腸/腎、肝/膵、肝/小腸、肝/腎、副甲状腺、甲状腺/副甲状腺/胸腺、腹部臓器群、腹部臓器7つ、腹部の大臓器8つ。単一及び複数臓器には、角膜、骨髄、睾丸、骨、皮膚（顔を含む）、髪、喉頭その他多くの組織種の移植など23種類が挙げられます。

現在、6種（腎臓、肝臓、心臓、肺、膵臓、小腸）の臓器移植には、衛生部（省）からの認可が必要です。細胞や組織移植には不要です。しかし、ほとんどの施設では、衛生部の認可を超えた複数種の移植を手がけています。

例えば、北京大学第三医院では、認可されている肝臓、腎臓、膵臓、小腸以外に、心臓、肺、角膜、幹細胞、骨髄、血管、髪も加え、合計11種の手術を行っています。

厦門大学附属中山医院は心臓移植の許可のみを受けていますが、腎臓、肝臓、膵臓、脾臓、肺、心臓/肺、小腸、膵島細胞、角膜、骨髄の10種の移植も行っています。

無錫市人民医院では、肺移植のみ認可されていますが、腎臓、肝臓、心臓、膵臓、角膜、幹細胞、骨髄、血管の8種の移植も行っています。

脚注